憧れの九寨溝は、それはそれは神秘的でございました。なんであんなに透明なの?お魚もいないし、鏡みたいにツルツルの水面に空やお山が映り込んで、さらに多彩な色になります。水面は本当に滑らか。表面張力でちょっと浮き上がってるんじゃないかしら。日本酒だったら、おっとっと…と口から迎えに行くところです。
別天地に行くまでには試練がございました。7時から入場できると聞いて、7時にホテルを出発。ホテルの前の道はすでに車でいっぱい。…嫌な予感がします。道端で防寒用ひざ掛けやら帽子やら自撮り棒やらを売っているオバちゃん沿いに歩いていくと…、なんじゃこりゃって思わず声が出ます!どこに行けばいいのやら。…適当に進んでいくと、入り口の表示。6,7レーンに並ばせています。
やっと列に並んだあとでも、前後、左右で中国特有のせこい小競り合いがあるのよね。…疲れる。…どうやら前に並ぶ団体はチケットを持っていないのに、ガイドがまずはと並ばせたらしい。チケットを持っていないと分かると、後ろからガーッと圧力が!私もそれに乗ってガーッと前へ前進。やっとチケットもぎりのところまで到着したのはいいけれど、人がみっちり詰まっていて、…と言うか混乱の極み。ゲートを通れない。…ホンマ、疲れるわ。こういうところで体力を使ってしまうのよね。
九寨溝は徒歩かバスで回りますが、ここからバスに乗るのが一苦労。何が何やら訳が分からず、適当に乗車し、バスから下されました。…でしばらく行くとこの別天地!さっきまでいた山のような人たちは一体どこへ?バスを乗り換えて先に行ったのかしら?人が全然いない!
ざぁーざぁーという水の音もマイナスイオンたっぷりで爽やか。中国にこんなところがあったなんて、心から癒されます。
水音が消えて、いきなり現れるのがこの水辺。”海”ではないと思うけど、日本語の”池”の範疇ではないよね。”湖”ってこういうものですか。それとお山の緑が映っていて、どこが境目かよく分からなくなります。東山魁夷の絵でこういうのってありましたよね。白い馬が走っていないか確かめてしまう。
透明度はこんな具合。枯れ木も苔も美しい。人っ子ひとりいないところでこの景色です。どこか別次元に迷い込んだみたいです。
透明の美しい景色はまだまだ続きます。ガイド兼運転手(と言うか運転手がちょっとガイドもしてくれている)のチベット族曰く、九寨溝には114の海がありますが、昨日は115番目の海ができました、人海です。うーん。人の気配のない場所からバスに乗って移動すると、わっ!やっぱり人がいっぱい!
この美しい景色もたくさんの人たちと共有します。運転手兼ガイドさん曰く、10月20日以降の九寨溝がベストとのこと。この緑の木々が紅葉するのですって。それが水面に映ると…、いろいろな映画監督がここを使いたくなるのも分かります。
おいおい、自撮り棒族たち、危ないではないか。自分たちでは分かっていないと思うけど、棒を持って笑顔を作っているのはかなり滑稽ですよ。
この滝はびっくりするほど幅が広くずっと続いています。滝は、水たちが頑張ってしがみついているのに、”あぁ…だめぇー”って感じで落ちていくイメージがあるのですが(そんなことありませんか?)、ここの滝は水たちが喜んで競って飛び込んでいく感じ。なぜか何となく嬉しくなります。
それでも滝の横、下にはこの人、人、人。…中国で人の多さを嘆いても、仕方ないかぁ。
さすが世界遺産だけあって、九寨溝はゴミがきちんと片づけられています。レストランも1か所しかないし、さすがの中国人もゴミはゴミ箱に捨てていました。人がいないところでも、修行僧のようにお掃除をする人。気持ちよく散策できるのは彼らのおかげです。
景色と人に圧倒されて、結局1時過ぎに出てきてしまいました。ガイドさんにはもったいない、早すぎると言われたのですが、Y字型の九寨溝の右も左も両方とも行ったし、真ん中の人が少ないところも朝方楽しんだし、8時に入ったとして5時間ぐらいウロウロしていたことになります。普段5000歩も歩かない私が2万歩以上も歩いている!
駐車場(のようなところ)は、観光バスがびっしり。これは混雑するはずです。バスに座っていたおばぁちゃん曰く、5時に出てきたのに中に入れたのが9時過ぎ。どこも人ばかりであまり見れなかった。とりあえず帰りの車が出るまでの間、できるだけたくさん見てやる!…私が宿泊したホテルは歩いても行けるような九寨溝に近い場所にあってよかったのですが、遠いホテルだと入り口までに時間がかかります。ここは本当に一本道しかありません。入り口ひとつを目指して多くの観光バスや自家用車がやってくるし、駐車場も効率よく運営されているわけでなく駐車するのも大変みたい。だからこそ朝のあの混雑。もう少し、うまく運営したら効率が上がると思うのだけれど。運転手兼ガイドさんに、道をもう少し作ればいいのに…と言うと、この道だけでも自然をずいぶん犠牲にしている。今、綿陽からの道を工事中だけど、道は整備しなくていい…とのたまう。じゃあ、観光客を制限すればいいのに…4万1千人は多すぎて対応できていない、と言うと、最低1日4万人はいないと、外の4万人を養えないと言う。…意味がよく分からないけど、そういうことらしい。でも周辺で商売しているのはチベット族でなく漢民族だと言っていました。
ここは標高が高いせいか、太陽が近い感じです。帰り道、日焼けしないように、ほっかむりをして歩いていると、今朝方はひざ掛けや自撮り棒を売っていたオバちゃん達が今度は果物を売っています。ここではあまり果物は採れないそうですが、成都等から仕入れた果物を売っているそうです。青りんごはとれるらしい。
九寨溝はレストランが一つだけ。カップラーメンやお弁当をみなさん食べていました。私はビスケットを持ち込み、飲み食いはしませんでした。ホテルに帰り、レストランでビールを飲みながらシンガポールビーフン。四川の山奥でこのホテルも別天地です。
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